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顧客生涯価値を最大化する経営戦略

ネットイヤーグループ株式会社 取締役 兼 SIPS事業部長 佐々木 裕彦


市場飽和による激しい財布の取り合いと、より厳しいコスト削減が、今後も全ての企業に求められていく中、突き詰めていくと消費者一人一人 (B2Bであれば法人一社一社) ごとの収益率を極限まで高めていくことが経営戦略の中心になることは間違いない。あらゆる企業の売上は、最終的には顧客一人一人 (一社一社) ごとの売上の積み上げであり、同じようにコストは、顧客一人一人ごとに発生するコストの積み上げであるからである。

これまでの企業経営は、事業部、支店、支社、販売チャネルといった社内部門が計上する売上と費用の総和のみを捉え、「如何に部門の営業力を強化するか」、「如何に販売コストを削減するか」といった社内管理の視点からの収益力改善に邁進してきた。


しかしながら、更なる競争力と収益力を求められる企業は、「如何に社内の収益力を強めるか」という社内管理の視点から、「如何に顧客一人一人の収益性を高められるか」と言う顧客管理の視点に変わって行かなくてはならない。理想的には、法人、個人問わず、その顧客がこれまでどれくらいサービスや商品を購入し売上に貢献してくれていて、また、その顧客にサービスや商品を販売し、カスタマーサービスを提供していくためにいくらの費用が掛かっているかを詳細に把握し、ぎりぎりまで最適化していく経営手法が求められるのである。

そういった経営戦略においては、顧客を一人一人でとらえ、それぞれに対して、適切なチャネルで適切なコミュニケーションをとり、商品を提供し、サポートを行い、そしてニーズを吸い上げ、また顧客にフィードバックをしていく。そのためには、顧客情報を一元で管理し、その情報に新たな付加価値を添えて、迅速に、効率よく社員や顧客と共有し、伝達する環境が必要である。

インターネット 〜ここでいうインターネットは、PCでアクセスできるインターネットや、ウェブサイトではなく、IP (インターネット・プロトコール) によって結ばれた広義のネットワークテクノロジーを指す〜 の誕生によって、「顧客生涯価値を最大化する経営モデル」が実現可能になったのである。

「顧客生涯価値を最大化する経営戦略」の基本は、如何に効率よく顧客を獲得し、如何に効率よく顧客を維持するかである。そして、効率の良い顧客獲得と顧客維持は、「ブランド」と「顧客管理」によって実現される。

元来、高い収益力は商品力と販売力によって達成されてきた。「良い商品を、より安く作って、できるだけ広く売る」である。しかしながら、安い労働力を求め続け、限界まで調達コストを下げる価格競争と、情報伝達速度の加速による技術力のコモディティー化によって、商品自体の差別化は価格でも性能でもつけにくくなってきた。販売力においても、系列や既得権に守られた販売網が崩壊し、インターネットという新しいチャネルによって、その優位性を保つことは難しくなってきた。

結果として、いま商品を差別化できるのは「ブランド」しかなくなった。持っていて気持ちが良いと思えるブランド、長く付き合っていきたいと思われるブランド、安心して付き合っていけるブランド。そういった、感情的な満足を満たすことで差別化されたブランドを構築できれば、顧客をひきつけるための労力は抑えられる。強いブランドを構築できれば、より効率よく顧客を獲得し、維持することができる。さらには、ブランドプレミアムとして一層収益を押し上げることになる。

そして、企業が商品を売りたい時に、そのブランドを好んでくれる見込み顧客と既存顧客にいつでもリーチできる環境を作ることによって、顧客獲得および維持の効率性はさらに向上する。これまでのように、必要な時に市場に飛び出てターゲットを探して歩っていては (または、広告を打ち、営業マンが走り回っていては)、効率が悪い。むしろ、「こちらが売りたい時」ではなく、「顧客が欲しい時」を捉えることが理想である。

ブランドによって差別化し、いつでも見込み顧客と既存顧客にいつでもリーチできる環境を作ることが、顧客生涯価値を最大化する経営戦略の基本である。
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