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企業サイトがブランド価値を高める

ネットイヤーグループ株式会社 取締役 兼 SIPS事業部長 佐々木 裕彦


「私は現場主義である」と訴え、現場に足を運び、経営に現場の声を積極的に取り入れるトップをよく目にするようになった。恐らく自社の店舗や販売店に足を運んだことが無い経営者はいないであろう。しかし、自社のウェブサイトを見たことがない経営者はまだ随分いるように思われる。「ITの分野は若い人に……」「自分は文系だから専門家に……」と如何にも自分には分別があるような発言をする社長に何度お会いしたであろうか。

2001年にネットバブルが弾けてから、しばらくインターネットに対して冷めた視線を送って来た方も多いと思うが、いまこそインターネットという市場の重要性を再認識すべき時である。総務省の「平成15年通信利用動向調査」によれば、昨年の国内のインターネット利用者は7,730万人になり人口普及率が初めて60%を超えた。また、ビデオリサーチ社の調査によれば、商品広告の認知経路においてもインターネットの占める割合は急増している。分野によって割合は異なるが、例えば国内旅行商品では既にテレビよりインターネットの方が倍近く高い。インターネットはもはや若い人やIT専門家のための特別な場所ではなく、会社が当たり前に取り組むべき一つの市場であるという事実を、もっと真剣に受け入れるべき時に来ている。

「顔」になった企業サイト インターネット市場において、企業サイトはまさに会社の顔であり、“現場”であると言える。日本を代表する企業であれば、月間約数十万から数百万人のお客様や株主が訪問していると思ってもらって構わない。これだけの数のお客様とコミュニケーションを取れる場が他にあるであろうか? 最近、企業サイトの価値を算出することが一部で試みられているが業界標準となる手法も定まっておらず、なかなか価値を明確にすることは困難なのが実状である。

弊社ネットイヤーグループでもこれまで大企業のサイト価値の算出を試みているが、弊社では大きく「代替価値」と「創出価値」に別けて考えている。「代替価値」とは、これまで行っていた企業活動をウェブサイトが代替することによって生み出される価値である。例えば新製品の認知度向上において、テレビCMと同等の効果をサイトがもたらしたとすれば、そのサイトはテレビCMと同じ価値を持つと考えることができる。弊社が行った調査では、某大手企業のサイトはテレビCM費用の約1/5の価値があると算出された。同様に、これまでコールセンターで対応していた業務をウェブで代替することによって削減できたコストも代替価値と言える。

一方で「創出価値」とは、これまでの業務活動では生み出すことができなかった、ウェブが創出する全く新しい価値である。例えば、従来の販売チャネルでは実現できなかった市場の開拓であるとか、顧客の注文を受けてから要望に合った製品を生産するBTO (Build-to-order) サービスによる収益などが該当する。

企業サイトは会社の業務内容によって、宣伝、販売、カスタマーサポート、調達、IR、採用など多岐に渡る役割を担うので、それぞれの役割において「代替価値」と「創出価値」を算出することができる。

ウェブ体験がブランドを左右 企業サイトが担うさまざまな役割の中で、もっとも価値の算出が難しく、ただし、創出価値として期待されるのがブランディングである。インターネットは、テレビCMに代表されるマス広告では実現できない顧客との関係作りが可能であり、結果として高いブランドロイヤルティを醸成することができると言われている。それはインターネットが双方向性と継続性という2つの特性を持つことに起因している。つまり、人と人とが継続的な対話を持つことによって信頼関係を深めていくように、インターネットの双方向性と継続性という特性を活かせば、企業もお客様と信頼関係を築いていけるのである。

弊社が実施したウェブサイトのブランディングへの貢献度を計る調査では、満足度の高いウェブサイトを持つ企業のブランドが、最終的に購入される傾向が高いことが分っている。携帯電話やデジカメといったハイテク製品だけではなく、いわゆる白物家電でも該当した点が注目に値する。また、KDDI社の携帯電話ブランドであるauが、昨年発売し大ヒットとなったINFOBARという機種の購入者アンケートでは、購入時に最も影響を受けた情報源として企業サイトが挙げられた。その他の機種では、企業サイトは3番目の影響度であった。INFOBARはその高いデザイン性から、他の機種とは異なり、専用のウェブサイトを構築しブランドコミュニケーションに注力したのだが、まさにその成果が出たと言える。まだまだ調査事例も少なく、調査方法についても改善の余地は残しているが、少なくともウェブサイトのブランディングへの貢献度を継続的に評価していく価値は十分にあることが伺える。


KDDI INFOBARのウェブサイト

ブランドは広告のクリエイティブ表現だけではなく、商品開発と販売、接客、社会貢献などあらゆる企業活動によって形成されているわけだが、やはり最も影響を与えるのものは実際にお客様が得た「体験」であることを忘れてはならない。商品を買った時の体験、商品を使った体験、カスタマーサポートで受けた体験、社員に接した体験である。

そして、ウェブサイトに提供されるコンテンツをクリックしたり、情報を検索したり、商品を買ったりといった一連の行動こそが、まさに「ウェブサイトを使った体験」なのである。だからこそ、サイトがブランディングに貢献する所以であり、サイトでお客様に与える体験を疎かにしてはいけないのである。

(2004年6月28日 日経ビジネス 特別編集版 掲載)
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