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コラム


2004年

ユーザー エクスペリエンス デザインとブランディング

ネットイヤーグループ株式会社
ヴァイスプレジデント
高京樹


ネットイヤーグループで簡単な社内教育プログラムを行ったとき、「ユーザー エクスペリエンス デザインとは何か」ということをスタッフに考えさせたことがある。出てきた回答の中には、

おもてなしの心をデザインすること
ユーザーの通り道に罠を仕掛けていくこと
ユーザーのブランドに対する態度を変えていくプロセスを作る
ユーザーが好きになってハマってくれる仕組みを作ること

というものがあった。
上記を少し言い換えると、ホストとしてお客さまとどう接すれば良いのか、あるいはビジネスを行う者として、ユーザーの通り道にどういう仕掛けをして、最終的にビジネスゴールが達成されるところまで持っていくのか、あるいは、マーケッターとして、ユーザーの態度変容をいかに促すのかと言ったことになる。
「ユーザーが好きになってハマってくれる」というのは、忘れてはならない重要なことである。セミナーや学会などではプロセスや方法論などの理論的な話が多く、「好きになってもらうためには?」という観点で議論されることが少ない。が、我々のユーザーが人間という動物である以上、どんなビジネスでも、ユーザーが好きになって、ファンになってしまう状態を作り出し、そしてその状態を持続することができれば、大抵うまく行くからだ。

ネットイヤーグループは、クライアントのビジネスを支援する業務を行っている。クライアントのビジネス上の課題を聞き、それを解決するべくサイトのリニューアルを行ったりするわけだが、現状のサイトを見てみると、多くの意思決定が企業側の都合によってなされていた点に驚く。企業の組織構成がそのままサイトのメニュー構成になっているとか、申し込みのフローは、システムの変更コストをかけたくないので、そうなっているとか、ユーザーのためになされた意思決定があまりに少ないのである。これでは、ユーザーが好きになってくれる状態を作り出すのは難しく、よってビジネスがうまく行かないのも当然である。

このような現状をふまえ、ネットイヤーグループはユーザーの視点を中軸においたユーザー エクスペリエンス デザインというアプローチを提唱している。企業側の都合ではなく、ユーザーに歓迎される体験はどういうことかという視点で設計することで、ユーザーが好きになってくれる状態を作り出し、その結果ビジネスゴールを達成させようというアプローチである。

ユーザー エクスペリエンスの構成要素
では、ユーザー エクスペリエンスにはどういった要素が含まれているのか? ネットイヤーグループでは、この言葉を以下のように定義している。「対象ユーザーが、何をどんなふうに見て、読んで、聞いて、触って、受け取って、その結果どのように感じて、次のアクションを起こすのかといった一連の体験の経緯」。

この定義の中には、いくつかポイントがある。

1. 対象ユーザーが明確になって初めて議論できるものである点
2. 何を提示するかだけでなく、「何を」が決まった後、「どのように」提示するのかというWhatとHowの両方が入っている点
3. 人間の五感全部に複合的に作用するものであるという点
4. ユーザーの論理的な思考のみではなく、実際に気持ちよかったとか楽しくなったという感情的な部分を積極的に考慮するものであるという点
5. インプットがあってアクションがあるというインタラクション (対話) が含まれているという点
6. 例えば、「テレビで見た商品が電車の中吊り広告にあって、サイトを調べる」といった、点ではなく線となった一連のシナリオが含まれている点

Webサイトの設計を行うにしても、そのサイトのユーザー エクスペリエンスを、これらのポイントを考慮して設計していく。それがユーザー エクスペリエンス デザインの基本思想である。

ユーザーに好きになってもらえたWINブランド コンテンツ
この基本思想を実際に設計に取り入れ実践し、成果を出したネットイヤーグループのもっとも最近の事例である、au WIN to the NEXT (WINブランドコンテンツ) を紹介したい。

キャプチャ: WIN BRAND CONTENTS

KDDI au: CDMA 1X WIN | WIN BRAND CONTENTS to the NEXT

CDMA 1X WINは、au携帯のブロードバンドサービスを総称するブランドであるが、このコンテンツの公開以降、以下のような現象が起きている:

1.
au電話の中で、WIN対応機種の売り上げが伸びている

2.
WIN関連コンテンツへのアクセス数が増加している

3.
ユーザーアンケートやBlogなどで、このコンテンツに対する高い評価の声が寄せられている

4.
このコンテンツからスクリーンセーバーのダウンロードが可能なのだが、1カ月で1万ダウンロードを突破した

これらの事実から、「ユーザーがWINというブランドを好きになる状態」を作り出すのに我々も少しは貢献できたのではないかと考えているが、我々がこのコンテンツを設計する際に主眼に置いたのは、WINというブランドが提供する世界をいかにユーザーに、「感じて」もらい、その世界の「気持ちよさ」に共感してもらえるかということである。長い説明をひたすら読んで理解するというのではなく、見て、聴いて、触れて、そしてWINの世界を感じてもらう。そういったコンセプトのもとで設計した。

WINの世界には、少し未来的な先進性があふれている。だがそれは、今まで我々が良く見せられ続けてきた単に金属的なものではなく、もっと自由で、しなやかに広がっていくもの。やさしく、緩やかで、心地よい空気も流れている。時には遊び心や知的好奇心も満たしてくれる。そんな世界である。

このコンテンツでは、以下のようなさまざまなシーンが展開する:

たくさんのキューブが浮遊しながら回旋する空間
ウォークスルーする街の中に、突如、オアシスのように現れる風車
人間の体内リズムと共振するような波動、そしてそれと同期するサウンド
サウンドの心地よいエコーの上に、時に警鐘のように発せられるノイズ
キューブをクリックすることで得点が表示される簡単なゲーム
加速し、減速し、そしてまた加速しながらどこまでも伸びていく曲線

言い出すときりがないが、これらはすべて上述のWINの世界をユーザーに「感じて」もらうために用意されたものである。

ユーザーエクスペリエンスを構成する一つの重要な要素である、人間の感性や感覚に訴えかける側面。この部分を徹底的に追求することで、WINというブランドとユーザーとの感情的なつながりを築き、ユーザーに好きになってもらえたのがこのコンテンツである。

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