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コーポレートサイトが企業を変革する

ネットイヤーグループ株式会社 SIPS事業部 第1グループ 副グループリーダー 倉重 宜弘

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「コーポレートサイトを見れば会社が分かる」というと、「そこまで言える?」という疑問が返ってくるかもしれない。しかし実際に我々は会社のサイトを拝見すると、「あー、これは手強そうだ。」「おっ、この会社はかなりイケてるぞ」「ここのウェブマスターは、相当苦労してそうだな」などと思えるのである。それは決して我々が「目利き」だというのではない。コーポレートサイトそのものが、本質的に企業の根幹に大きく根ざした存在だからである。
そもそもインターネットが出現するまでは、企業が自社のサービスや製品の情報の全てをさらけ出して、しかもユーザー本意で理路整然と整理して提示しなければならない機会は、ほとんど皆無だったといえるだろう。紙に印刷された立派な会社概要はどこの会社にもあったが、あくまでビジョンや事業概要の記述にとどまるものだった。また製品やサービスのカタログは、各製品・サービス毎に用意されていたため、例えば営業マンは必要な時に必要なものだけユーザーに提示すればよかった。それらを全て並べたときに初めて明らかになる矛盾や不整合には、ユーザーは勿論、提供している企業側もそれほど明確に把握していなかっただろう。しかしいざコーポレートサイトを構築しようとすると、その矛盾が一気に白日の下にさらされてしまう。業種を問わず、互いにマーケットを浸食し合う製品・サービスを保有している企業は決して珍しくない。それらをサイトにすると並べて説明せざるを得ない局面に直面し、ユーザーに何と説明して良いか苦慮することが非常に多いのである。
またコンテンツの内容のみならず、ビジュアルやイメージにおいても同様のことが起こる。例えば、事業部ごとにそれぞれの製品・サービスを、個々に独自の表現でプロモーションをしていると、コピーや広告用の画像のイメージがバラバラで、見るからに何ともまとまりのつかない画面になってしまう。「この会社って何?」という疑問を抱くユーザーが少なくないことは容易に想像できる。
更にいえば、コンテンツの更新の責任範囲を考え、運用のしやすさを優先すると、どうしてもコンテンツの分類が、その会社の部署の区分けに近づいてくる。そうなると必然的に「ユーザー本意」からは遠ざかってくる。なぜなら多くの企業が、製品やサービス毎に区切られた「プロダクトアウト」的な組織形態を引きずっているからである。そうした場合我々の使命は、既存の組織とユーザー志向を両立させるために、そのゆがみを吸収する構成のサイトを設計するということになってくる。単純な中庸というわけにもいかない。これは単純なサイト構築という枠を超えた、困難な業務だといえるだろう。
こうした業務を続けていく中で、昨今これまでと違った動きが少しずつ起こっていることに気づいた。企業がこうした課題解決に前向きに取り組み始め、先進的な企業から順に自らの組織形態を改め始めているということである。例えばコーポレートサイト構築プロジェクトを、会社全体のプロジェクトと位置づけ、特定部署がうまくリーダーシップをとりながら関係部署を横断的に巻き込むように組織するのもその一例である。このプロジェクトチームはあくまで非公式ではあるが、横断的なコミュニケーションを密に取ることができるため、既存の組織と対ユーザーとしてあるべき組織との矛盾をうまく吸収することができる。しかもそこで定期的に議論される話題は、他部署の課題にも踏み込んだ、正に企業全体のマーケティングのあり方にまで及ぶことが少なくない。このプロジェクトチームの社内での権限があくまでウェブサイトに限定されているため、議論が無力感で終わることもしばしばだが、私はこうしたプロジェクトに関わるたびに、その大きな可能性を感じざるを得ない。当人のプロジェクトメンバーの皆さんは、決して大上段に「組織とマーケットの齟齬」を議論し、それに真っ向から立ち向かっているというわけでもない。むしろ如何に質の高いコーポレートサイトを構築するかを真面目に突き詰めていく結果としてそうしているだけである。これは正に「ユーザー本意であるべき」というウェブサイトもしくはインターネットの本質が自然にもたらした変化だと言えるだろう。今後企業間で差が出てくるのは、そうした本質的な取り組みを積極的にできるか、さらには実際にプロジェクト化していくパワーがあるかどうかだろう。いずれは多くの企業がこうした方向性を取らざるを得ないだろうが、現在それに気づいて着手しているかどうかが、いわゆる「勝ち組・負け組」への大きな岐路となっているのではないだろうか。
ここまでお話しすると、冒頭にあえて誤解を恐れず「コーポレートサイトを見れば会社が分かる」と申し上げたのも、それほど違和感を持たれないかもしれない。
今後もこうした組織の変化が進んでいくだろう。ソニーが昨年末に立ち上げた「コネクトカンパニー」も、もしかしたらそうした変化の一つかもしれない。松下電器は数年前に、事業部ごとに存在したマーケティング部門を本社に集結させ、製品企画からカスタマーサービスまでを統括する部門にした。更にこの4月にはネット周辺のマーケティングを一元化する体制を構築すべく、関連子会社を合併してアイ・マーケティングアドバンス(IMA)を設立すると発表した。KDDIもやはりマーケティングを全社的に統括することを主旨とした組織変更を発表している。
こうした事例を垣間見ても分かるように、コーポレートサイトという、一見、本業から遠い存在に見られがちな新しい顧客接点こそが、企業に自らの組織形態を、より「ユーザー本意」「マーケットイン」に近づける変化をもたらすきっかけになっているのである。いまこそ、御社のウェブサイトを、一部門に管理を委ねるだけではなく、全社を挙げて取り組むべき経営課題として認識すべき時ではないだろうか。
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