もともと単なる情報発信に留まっていた企業のホームページは、ユーザーの視点に立ったユーザビリティーを実装し、よりビジネスに活用されるまでに至った。そして、ホームページは、ウェブサイトという姿となって、より戦略的に更なる進化が求められ始めている。
「"ホームページ"を戦略的に構築する」という表現にとても違和感を持つ。私たちと同様にネットを活用した事業戦略の策定やマーケティング活動の支援に携わっているプロも、そもそも"ホームページ"の定義を知っているのだろうか。
ホームページ(Home Page)の定義をGoogleで検索すると、「ウェブサイトに最初にアクセスする時のメインのページ」と定義されている。一方、ウェブサイト(Web
Site)の定義を検索すると、「ワールドワイドウェブ上に存在する複数のウェブページやファイルの集合体」となっている。つまり、ホームページはウェブサイトの一部でしかなく、あくまでも戦略的に考えるべきはウェブサイトなのである。ネットイヤーグループでは、クライアントとのコミュニケーションの都合上、便宜上ホームページという表現を使うこともあるが、当サイトではすべて「ウェブサイト」で統一表記されている。
ホームページとウェブサイトとの違いを「単なる表現の違いではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、私はこの違いをとても本質的であると考えている。そして、企業が自社のネット戦略やインターネットの活用レベルを、次の次元に高められるか否かの境目は、その企業が「自社ホームページ」ではなく「自社ウェブサイト」という表現を使う意識があるかどうかであると考えている。
言葉というのはとても重要で、その表面的な表現ではなく、その言葉が持つ本質的な意味を捉えなければならない。ウェブサイトのことを、"ホームページ"という表現を使っている企業は、ウェブサイトの情報発信の機能しか捉えていない傾向がある。特に、この傾向はウェブ担当者ではなく経営者に当てはまる。ウェブサイトを「一枚のホームページ」ではなく、ページの集合体であると意識することで、ウェブサイトを立体的に考えることができるようになり、ひいてはウェブサイトを企業のさまざまな事業活動の集合体として捉えることができるようになる。ウェブサイトを立体的に捉えることによって、ユーザー エクスペリエンス デザインや情報設計という概念が必要になり、表層的な表現手法だけではなく、使いやすさ(ユーザビリティー)の実現や、最適なサービスや経験を継続的に提供していくことが如何に重要で、そして困難であるかが見えてくる。また、ウェブサイトを事業活動の集合体と捉えることで、情報発信という機能だけではなく、ネット以外のリアルな日常業務に密接的に連動させることの必然性が浮かび上がってくるし、さまざまな事業活動との連携を実現しなければネットを戦略的に活用していることにはならないと気づく。
企業サイトの進化
インターネットの黎明期。第1世代の企業ホームページは、まずインターネット上でのプレゼンスを作ること自体が目的であり、会社情報の提供が主要機能だった。「社長の挨拶」がトップページに来ていたホームページも少なくなかった。"ユーザーのため"、"お客さまのため"というよりは、むしろ世間体のためでしかなく、企業にとっては負荷でしかなかった。
インターネットユーザーが急増し、さらにブロードバンドが普及して来ると、無視できない規模のお客さまや見込み客、株主がホームページにアクセスするようになった。第2世代のホームページでは、ユーザーのニーズを考察し、それに応えるために高いユーザビリティーを実現し、商品情報、キャンペーン情報、IR、CSRなど多岐にわたるコンテンツが実装された。ビジネスにも積極的に活用され、ダイレクト販売モデルにおける売り上げの増加、資料請求件数の増加、見込み客の獲得、ブランディングなど明確なビジネスゴールが設定されている。運用面では、デザインガイドラインや運用ポリシーが定められている。現在、企業サイトを事業戦略上の重要なチャネルとして認識し、活用している企業の多くはこの世代であると言える。
では、これからの企業サイトはどこに向かっていくのか。
まず技術面から見ると、昨今話題になっているWeb 2.0対応が進むであろう。RSS配信、Blog やSNSの活用、Webサービスなど標準技術を活用し、ウェブサイト間の連携や、消費者と一緒に作るコンテンツへの取り組みが見られるであろう。
また、外部環境としては、これまでのマス媒体依存型のマーケティング効果がますます薄まっていく。したがって、企業がメッセージを伝達するのに他媒体だけに頼るのではなく、自らがメディア化したり、自社に関連のあるテーマでソーシャルネットワークを構築したりしながら、見込み客や既存顧客との関係を強化していく方法も模索されるであろう。そのためにもWeb
2.0対応が求められる。
これらは外部から見てわかる企業サイトの進化である。つまりはコンテンツであり、提供されるサービスの進化である。
求められる進化は企業サイトの裏側
第3世代で最も重要な進化のポイントは、実は企業サイトの裏側にある。インターネットが会社にとって重要なチャネルになればなるほど、ネットだけを切り離して考えることはできず、如何に他のチャネルと連携させるかが重要な鍵となってくる。ネットも含むすべてのチャネルにおいて最適化されたマーケティング戦略を実現するためには、全チャネルの業務が連携されていなければならない。同様に、ウェブサイトを今よりもっとビジネスに活用するためには、サイト担当者は営業やコールセンターなどの他部門と連携し、一貫した業務フローを設計しなければならない。もしくは、部門を横断する組織の組成が必要になってくるであろう。特に、法人向けのビジネス(B2B)の企業サイトにとっては、第2世代までの進化はあまり効果が見えないケースが多いため、一気に第3世代を視野に入れての進化が必要になる。
とはいえ、部門間を越えての連携とは言っても、一筋縄では行かないのが現実である。むしろ、技術的や表現上の課題には解決策はあっても、組織の壁を乗り越えるほうがはるかに難しい場合が多い。各部門ごとに異なる目標設定、政治的や障害、予算の割り振りなどの観点で連携が難しい現状を打破し、一歩先に踏み込んだ企業が成功するであろう。
これまでのウェブサイトは、どんなにインターネットが普及して来たといっても、やはり社内におけるさまざまな業務の中では、"新しいモノ"として特別扱いされてきた。しかし、これからはインターネットやウェブサイトが特別で新しい業務ではなく、当たり前の事業活動の一つとして位置づけられる。しかも、企業サイトほど、ありとあらゆる部門や部署が関与してくる業務は無い。
だからこそ、ウェブサイトはまさに事業活動の集合体であって、単なるホームページではないと指摘した所以なのである。