前編ではコーポレートサイト内に眠っているコンテンツを解放することが重要であるとお話ししました。後編では「コンテンツの解放」の現状や今後について、事例を交えて4つの段階に整理してご紹介します。
1. コンテンツを継続的かつタイムリーに受け取りやすくする

コーポレートサイトのコンテンツを増やしていく上で、そのコンテンツをユーザーに知らせ、見てもらうことが重要です。コンテンツを知らせるために、古くはメールマガジン、トップページの更新情報を用いていました。

検索エンジンから必要なタイミングでコーポレートサイトの情報にアクセスできるよう SEO 対応を行うようにもなりました。さらに、コーポレートサイトのトップページ(ホーム)だけでなく、サイト内の様々なコンテンツ自身もサイトへの入り口であることを、意識するようになりました。ただ、それは情報を継続的に知らせることにはならず、継続的に伝える手法は長年メールマガジンに委ねられていました。

現在は、情報を継続的かつタイムリーに受け取りやすくする方法として RSS の提供が一般化しつつありますが、ミニブログ(Twitter
など)の活用も試行錯誤されています。マツダが Twitter での情報提供を日本で初めて行ったり、天気予報や乗り換え案内などの情報を頻繁に提供するウェブサービスにおいて、
RSS 的にミニブログからの情報提供を行っている例も少なくありません。

また、「受け取りやすく」という意味を広義にとるならば、ウェブサイト内でのコンテンツの発見のしやすさそのものも重要で、そのためのユーザビリティやファインダビリティの向上があります(ユーザーのニーズにあったカテゴライズや導線の提供、文脈に沿ったコンテンツの提供、使える検索など)。その発展系として、フォークソノミーやタグ付けなどユーザーがウェブサイト内を任意のキーワードで分類し、ユーザー自身の視点でコンテンツを探して受け取ることができるという例もありますが、それらはユーザーたちがデータを登録・蓄積するソーシャルなウェブサイトでたくさん見受けられます。コーポレートサイトではあまり例を見ませんが、今後このような手法が効果的に組み込まれていく可能性があるでしょう。
2. コンテンツを引用・共有しやすくする

ユーザーに見てもらったり体験してもらったコンテンツは、それ自身が特に良いモノであれば、ユーザーはそれらを引用して、人に伝えたり共有しようとするでしょう。(悪いモノでも同じように共有しようとしますが。)そのようなユーザーの活動を阻害せず、むしろやりやすくしてあげることが重要です。そうすれば、より幅広く知ってもらえるようになるでしょうし、共感も伝わっていくでしょう。その行為を助けるために、古くはメールで友人に知らせる機能やプリント機能が提供されていましたが、現在は他にも様々な例が存在します。

引用・共有してもらうためには、コンテンツそのものにささやかな気配りが必要です。最低限、文章情報はコピーして引用できるようにするべきです。Flash
などでテキストが選択できない、画像文字でテキストが選択できない、という状況を極力なくし、ブログやコミュニティで内容を紹介しやすいようにするとよいでしょう。

会員のみの閲覧も極力なくすべきです。ユーザーを囲い込んで提供したいコアなコンテンツこそ、もっと外に出すべきです。オープンで、コラボレーティブである方が自然です。

共有がスピーディかつ広範囲に行われやすいソーシャルブックマーク対応は、ニュースサイトなどで行われていますが、コーポレートサイトではあまり例を見ません。

ブログパーツは、製品やプロモーションコンテンツなどの特定コンテンツで提供される例が数多く見られます。そのため、製品などのプロモーションとして、共有しやすい状況はたくさん作り出されているといえるでしょう。ただし、より引用しやすい仕組みはまだ弱いと考えられます。

EC サイトのアフィリエイトは、ブログで引用してもらうためのタグの発行を行う例がみられますが(そのタグをコピー&ペーストすれば、該当商品の簡単な説明記事がブログの記事内に表示される仕組み)、コーポレートサイトにおける製品やサービスをそのように引用してもらう例は、ほとんど見受けられません。

セカンドライフのようなメタバース市場では、実験的に様々な試みが行われています。メタバースでは、参加したユーザー同士でさまざまな体験ができるため、体験と同時に共有が行われます。それらを外部の人たちにどう伝えられるようにするか、その架け橋が考えられていくでしょう。

動画コンテンツでは、 YouTube などの動画共有サイトにコンテンツを提供し、そこからブログに引用・共有しやすくしている例がプロモーション的観点で生じています。

コーポレートサイト内のコンテンツでも、そういった引用・共有の促進が行われるとよいでしょう。
3. コンテンツの引用が「見える」ようにし、企業側の情報とユーザー側の情報の
関係性を明確にする

引用元と引用先で、それぞれの関係性が見えるようにすることで、情報をみたユーザーが両方を行き来し、いろいろな見解を「容易に」持てるようになります。多角的な視点からコンテンツに触れ、ユーザーそれぞれが自分にあった判断を下せる状況を作ることが重要です。これはコミュニケーションを明示的にする行為ともいえるでしょう。

引用の関係性が見える最たるものはトラックバックです。
トラックバックの活用は、コーポレートサイト内のブログで提供していることがほとんどです。ブランディングの観点や、ある特定商材のプロモーション・キャンペーンの観点から、ブログを用いたトラックバックの活用が行われています。ニフティ
のコーポレートサイトトップページでは、トラックバックを紙飛行機にして飛ばしてコミュニケーションを形にしているなど、ブログのトラックバック活用例は多数存在しています。

普通のコンテンツでも、ユーザーたちがどんな視点をもったり経験をしたり評価をしたりしているのかを、正直かつダイレクトにつなげられるようにすることが、深い段階として必要になってきます。それはトラックバックという対ブログ観点だけでなく、コーポレートサイト内でのコミュニティや他の
SNS などとの連携も視野に入れることになるでしょう。そういった連携には、企業がユーザーへ対等な立場で向いているという姿勢が必要であり、ユーザーは自分の発言に責任をより深く持つ、ということにもつながります。

リスクや人的コストの課題はありますが、引用が明確になり、それがコミュニケーションを促進させることで、それらの中からより質の高い考えや知恵・知識が発生していくことを期待する試みといえるでしょう。
4. 企業側のコンテンツをユーザーがカスタマイズしたり、企業がユーザー側の
情報を取り込んだりすることで、新たな情報価値を生み出せるようにする

ユーザーと企業が発想を出し合い、コラボレーションしていくことは、企業とユーザーの新しい関係を生み出すことでもあるといえます。ですから、これからは企業とユーザーがどのように関わり合うのかが重要なポイントになります。CGMも含めて、コーポレートサイトにおけるユーザーとの活動を幅広く捉える必要があるでしょう。

EC サイトでは、ユーザーの評価をフリーテキストや5段階評価などの定量評価として商材情報と共に掲載し、判断のための情報価値を生み出せるようにしています。アフィリエイトによってユーザーのコンテンツとの連携も取られています。良質なアフィリエイトはユーザーが企業側のコンテンツを生成しているようなものです。

コーポレートサイトにおいてコンテンツをユーザーに自由に生成させる手法は、まず行われていないといってよいでしょう。コーポレートサイト内で、ユーザーにコンテンツを生成させるような形を作るか、もしくは外部でユーザーがコンテンツを生成しやすいように、素材としてのコンテンツを提供し、それを手渡して自由に活用できるなどの手法が考えられます。
しかし、情報の正確性への懸念や、コミュニケーションリスクがあるため、そういった事例はあまり見受けられません。ある特定のコンテンツでユーザーに感想や意見を書き込ませてその場で表示する、といった例はありますが、一言感想レベルに終わっているため意味があるとは言い難いのが現状です。企業視点での商品情報に対して、ユーザー視点での商品情報を設ける、といった思いきったものはほとんどありませんが、iRiver
のサイトなどで近い試みがチャレンジされつつあります。企業側で提供できる視点や情報だけではどうしてもユーザーの視点をすべてフォローすることはできません。ユーザーにあずけてフォローしてもらい、ユーザー自身に説明してもらうという思いきりも重要です。

ブログキャンペーンでは、デパートにブロガーが取材をしに来て定期的にブログを書かせた事例などがあります。企業のサービスそのものを公式に解放して、自分のブログにユーザー視点でコンテンツを生成させる、という試みです。近年、ブロガー向け発表会などでブロガーに体験させてそれをコンテンツにしてもらう、というケースも増えており、ブログとコーポレートサイトでゆるく関係性を持ち合うことが増えています。

サポートの分野では、アップルのディスカッションボードのように、ユーザーたちのみでコミュニケーションを行い、サポートをし合うという場を取り込んでいる例が古くから少なからずあります。

ニコニコ動画に見られる、素材とユーザーの発想から全く新しい価値や活動がコンテンツとして生じる、という事例は一つの理想といえるでしょう。
こうやって見てくると、コンテンツは固定的ではなく、流動的に提供・活用・変化するべきものだということが感じられます。ウェブサイトというものの境界が、コンテンツの中に内包される情報そのものにとってはあまり意味をなさないことにも気づきます。コンテンツの価値・利用性といったものが、以前よりももっと多様になってきています。様々なウェブサービスと連携したり、それらにコンテンツを受け渡したりすることで、コンテンツは多様性を獲得し、本来の情報価値を引き出してあげることができるのです。

人と人の関係性が知を媒介にして深まっていくソーシャルなウェブの流れ。
その中にコーポレートサイトが組み込まれていくことは、これからの基本的な潮流です。コンテンツを解放するということは、そういった流れに対して、コーポレートサイトの中に閉じこめられていたコンテンツを流してあげる行為といえます。その行為は、コーポレートサイトにおけるソーシャル化につながっていくことでしょう。
■おわりに

今まで、使い方を教える(ガイドする)コンテンツというものは単なるユーザーサポート用のコンテンツとしての役割のみを担っていたわけです。それが、ブロードバンドが当たり前の環境になった今、動画の方がわかりやすいから、丁寧に解説した動画を作ってサイトに載せよう、というケースが増えています。あの再発明された電話、iPhone
のガイド動画コンテンツは非常にわかりやすく、そのユーザーインターフェースのすばらしさをどんなニュースサイトの解説記事よりもはっきり体験し、感銘を受けました。私はその動画のガイドコンテンツを知人に見せ、どれだけ
iPhone がすばらしく革新的かを語ったものです。この動画のガイドコンテンツが、もし YouTube
に掲載されていたら、知人に見せたり、自分のブログに動画を貼って紹介することが圧倒的多数の人びとによって行われたことでしょう。ニコニコ動画に提供していたら、もっとおもしろいことになるかもしれません。

Leopard の動画のガイドコンテンツも大変すばらしいものでした。でも、それらの動画のガイドコンテンツは、アップルのサイトに縛られておかれていたままでした。なんともったいないことでしょうか。良質な動画のガイドコンテンツは、プロモーションツールとし
うまく活用しているといえます(Google は自社の新サービスの使い方を YouTube にアップして紹介しています)。

このように、自社のウェブサイトの中で縛られているコンテンツたちはたくさんあるはずです。それらをまずは解放してもっとパフォーマンスを出せるようにしてあげるべきですし、これから作り出していくコンテンツは、そういった視点を忘れずに作り出していきたいものです。

近年、Web 2.0 の概念が一般化し、ウェブ上のサービスが大幅に進化しています。コミュニケーションの時代やユーザーにメディアが移った時代として捉えられていますが、その裏を返せば、コンテンツをもっと活用しなければならない時代といえます。それは、今まで育ててきたコーポレートサイトの中に眠る良質なコンテンツを掘り起こして解放したり、これからのコンテンツのあり方を捉え直し、自由度の高いコンテンツを生み出す行為です。コンテンツが真の意味で解放され、変容を許容され、その価値が要望や状況に合わせて変わっていく時代、というのが、今まさに起きているウェブの変革の一要素です。情報に意味合いを持たせ、その意味合いから自由に情報を引き出すことができるようなセマンティックなウェブになっていけば、それがより加速することでしょう。