「ネコ型マーケティングセミナー~従来の施策に反応しないネコ型顧客を捉えるアプローチ方法~」セミナーレポート

2017年7月28日に開催したセミナーのレポートをお届けします。
消費者ニーズが多様化するデジタル時代において、個客一人ひとりに最適な情報を提供するカスタマーセントリック経営が求められています。こうした中、弊社が着目したのが、従来のマーケティング施策には反応しない「ネコ型顧客」です。
第一部では、弊社取締役で、インターネットを戦略的に活用し、企業の成長やマーケティングを支援する佐々木裕彦が登壇。「デジタル時代のカスタマーセントリック戦略」と、新視点のカスタマー研究「ネコ型顧客のマーケティング」について解説しました。
第二部では、弊社のデジタル広告事業を牽引する桐生学が登壇。総合酒類メーカー三和酒類株式会社「iichiko」の事例を交え、「ネコ型顧客を捉えるリアル&デジタルのアプローチ方法」について解説しました。
現業の範囲内でなく、お客さまを中心にサービス・組織・業務をつくりあげる
第一部で、まず佐々木が見せたのが、米大企業のChief Experience OfficerとChief Customer Officerの画像。部門ごとではなく、全社でカスタマーエクスペリエンスの観点から事業計画を立てる。そうした経営が求められている欧米では、顧客との関係を構築する責任者が今注目されています。
情報過多ゆえに企業のメッセージが届かなくなった。モノ消費からコト消費へ、消費者の価値観が変化した。店とWebの垣根がなくなり購買体験が自由になった。こうした時代の変化によって、求められているのが、徹底的にお客さまに寄り添い、お客さまのことを理解し、お客さまの都合に合わせてサービスを提供するカスタマーセントリック経営です。
これまでの顧客中心志向は、あくまでも現業の範囲内でお客さまの都合に合わせたもの。これからは、お客さまを中心にサービス・組織・業務をつくりあげる“個”客中心志向が求められます。
ここで佐々木は、カスタマーセントリック企業になるための課題やポイントについて解説。さらには、お客さまとその体験を理解する手段としてカスタマージャーニーが有効であり、戦略的オウンドメディアが“個”客のパーソナライズされた体験を実現できると語ります。
また、仕入れや製造を起点に考えるのが常識だった小売業が、理想の顧客体験を起点に考えるDtoC(Direct to Consumer)に変化していると語り、米国で急成長するDtoCブランドの例を紹介しました。
従来のマーケティングはイヌ型向け。ネコ型には通用しない
続いて、佐々木が語ったのが「ネコ型顧客マーケティング」です。
高い頻度で購入しているのに、メルマガやクーポンに反応しない。ポイントにもまったく積極的ではない。買う場所やタイミングがバラバラ。気に入ってもSNSでシェアはしない。「そのブランドが好きなのに、施策にまったく反応しないお客さまはいませんか?」と、佐々木がセミナーに参加した方たちに語りかけます。
弊社は、その真偽を確かめるべく、オンラインで約6万人に調査。すると、顧客は「イヌ型」と「ネコ型」に分類できることがわかりました。
●イヌ型…トレンドを意識し、おすすめを素直に購入。ポイントやクーポンを頻繁に利用し、SNSでのシェアにも積極的。
●ネコ型…信じるのは、世間の評価より自分の感覚。メルマガはまず読まない、買い物は気が向いたとき。SNSで共有もしない。
「これまでのマーケティングは、イヌ型顧客に向けたもの。それと合わせて、ネコ型顧客に向けたマーケティングも必要」と、佐々木は力説。「まずは、御社のネコ型顧客の属性を知り、ネコ型カスタマージャーニーを描くことが大切。ネコの好みにあわせて施策をカスタマイズし、商品軸ではなく文脈軸で砂場に誘い込みましょう」と締めくくりました。
【事例:iichiko】ネコ型顧客をも捉えるプライベートDMPを使ったO2Oマーケティング
では、実際にネコ型顧客を捉えるアプローチはどのようなものになるのか。それを解説したのが、第二部です。
桐生はまず、ネコ型顧客をひきつけたデジタル広告やコンテンツ、販売をしない自動車のショールームの事例を紹介した後、自身が担当する「iichiko」のデジタルマーケティングプロジェクトについて解説。プロジェクトゴールは、今までのファンだけでなく新しい飲用機会を創造すること。プロジェクトが進むとサイト来訪者の属性が変化して行ったと語ります。
注目すべき手法は、商品とは直接関係ないリッチコンテンツやテーマを軸にしたリアルのイベントを、顧客属性やその価値感覚に合わせた文脈で提案することにより、今まで持つことがなかった顧客接点を獲得し、新しい飲用機会を創造していることです。具体的には、事前にデータ分析を行い、分類したターゲット顧客グループに、全く異なるリアルのイベント内容、広告やコンテンツ内容を提案しました。特に、デジタル広告掲載1週間で定員3倍の応募があったという有料飲用体験イベントの話には、セミナー参加者も興味津々の様子。
桐生は、「新しい顧客を創造するには、データ分析をベースにした仮説立案センスと目先のROIにとらわれない新規顧客開発を行うための投資にデジタルマーケティングを活用することの社内コンセンサスが重要だと締めくくりました。
セミナーに参加したお客さまの声
- 従来のマーケティング施策に反応しない人たちをネコ型に分類することで、反応しない理由がつぶさに理解できるようになり、とても興味深い切り口だと思った。
- 従来のブランディングではネコ→イヌに育てていくイメージだったが、ユーザー特性であるネコとイヌは変わらないことがわかった。
- 同一のユーザーでも向きあうモノによって「ネコ型」「イヌ型」要素が混在すると思う。単なるデモグラで片づけられないところはおもしろいと思った。
- 事例が興味深かった。アートとライフスタイルの2軸で、オンラインとオフライン施策を回すのは大変だったと思うが、新顧客との出会いと発見があって素晴らしいと思った。データに基づく仮説を立てる重要性にも気づかされた。
などのご意見をいただきました。
講師

取締役 佐々木裕彦
創業メンバーとして、インターネットを戦略的に活用して企業の成長やマーケティングを支援する事業をけん引し、2008年のIPOを実現。1993年から2000年までニューヨークに在住し、インターネットが商用化されたと言われる1994年から、インタラクティブマーケティングやデジタル戦略を専門にしてきた。マーケティング、ブランディング、データ活用、CRM、Web、ソーシャル、新規事業開発まで広範囲な知見を持つ。セブン&アイ・ホールディングス、KDDI、NHKエデュケーショナルなどの多くの大手企業に対して、デジタル戦略のコンサルティングに従事。学習院大学卒業、Baruch College,The City University of New York 経営学修士(MBA)。

ネットイヤーグループ株式会社
デジタルアドバタイジングリード 桐生学
GMOインターネットでISPサービス開発、メディア事業開発を経て、05年にトランスコスモスに入社。投資先企業のハンズオンバリューアップを担当、広告配信システムベンダーDoubleClickのメディアレップAD2で事業開発を行う。
当時、グローバルでも最先端テクノロジーを使った広告サービス(動画広告をネットワーク配信するインターネットCMネットワーク、広告対象地域を絞って配信するエリアターゲティングネットワーク)を提供。大手総合広告代理店と協業してブランド企業のデジタル広告を多数手掛ける。
07年に検索エンジンや動画投稿サイトを運営するAsk.jpでは、独自に開発した”投稿動画配信サーバ及び投稿動画配信方法(特開2009-94980)”をベースに、ユーザー投稿動画のフレームに広告を配信するCGM型動画広告ネットワーク事業を立ち上げる。その後、サンプル百貨店(現在オールアバウトライフマーケティング社が運営)専務取締役、SSP・DSPベンチャーGenieeの執行役員を経て、14年にネットイヤーグループに参画。データテクノロジー、マーケティングコンサルティングを軸にした広告事業を立ち上げ、現在はブランド企業のデジタルマーケティングの推進、支援を行っている。
ネットイヤーグループセミナー事務局について
ネットイヤーグループは、創業からユーザーエクスペリエンスデザイン(UXD)という考え方をもとに、デジタル戦略の策定や実行の支援をしてきました。
弊社ならではの知見を活かし、みなさまのビジネスにお役立ちできるセミナーを毎月開催しています。
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