「顧客のニーズを捉えるWebサイト構築・リニューアルセミナー ~UXを効果的に活用するWebデザイン×マイクロサービスアーキテクチャとは?~」セミナーレポート
2018年2月23日に開催したセミナーのレポートをお届けします。
Webサイトに対するユーザーのニーズは、急速に変化しています。企業は自社サイトを構築・リニューアルする際、競合を意識するだけでなく、絶えず変化する顧客ニーズを起点としたデザイン設計やシステム開発を行うことが重要となります。
第1部では、コーポレートサイト、ECサイト、グローバルサイトなどのビジュアルデザイン・アートディレクションを数多く手がける、弊社の金成奎が登壇。ユーザーエクスペリエンスや要件定義をデザイン設計に落とし込むために、Webサイト管理者(発注者)が押さえておくべきポイントやプロセスについて解説しました。
第2部では、株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングの高安厚思様が、「顧客の要求変化を意識した『システム』」について解説。システム担当ベンダーとしての立場から、システム開発中に変化する顧客の要望にどうやって対応できるかについてお話しいただきました。
さらに第3部では、サイト構築の弊害とそれを克服するための対応策について、株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングの安達邦彦様、高安様、弊社・金がディスカッションしました。
理想のUX実現のカギは、デザインの“言語化&体系化”
第1部で金が伝えたのは、「理想的なWebデザインの進め方」です。モノよりコトに価値を求める消費行動の変化と、デバイスの多様化によって、ユーザーエクスペリエンス(UX)がますます重要になっています。一方、理想のUXを可能にするために欠かせないのがユーザーインターフェイス(UI)。デジタルを通じたコミュニケーションの比率が高まることで、UIの設計、つまりデザインがUXそのものに大きく影響を与えるようになっています。
ところが、「デザイナーとクライアント間の認識のずれは、いまだ解決されていないのでは」と、金が疑問を投げかけます。それをなくすためにも、「ビジュアルデザインを言語化・体系化し、定義を明確にすることが重要」と力説。デザイン=設計、つまり「ビジュアルデザイン=視覚上の設計」。自動車、スマートフォン、インテリアなどの例を挙げながら、ビジュアルデザインの定義は、「UIに機能性と情緒性を与える視覚上の設計である」と語ります。
ビジュアルデザインの機能性、情緒性、それぞれを区分することで、曖昧なデザインを言語化・体系化する方法を解説。では、実際のプロジェクトにおける要件定義フェーズで、この共通言語を使用してデザイン作業をどう進めていくのか。架空のコーポレートサイトのリニューアルを例に、「1.調査・分析→2.基本方針策定→3.詳細方針策定→4.可視化」といった4段階に分け、それぞれに何を行うべきか、具体的に説明していきます。
金は「人によって定義・捉え方が曖昧な『デザイン』という言葉だが、機能性と情緒性という観点から『デザイン』の定義を明確にし、ステークホルダー間で共通言語化することで、理想のUXは実現できる」と語り、第1部を締めくくりました。
顧客の認識の変化に、システム担当者はどう対処すべきか
第2部では、システム担当ベンダーとしての立場から、高安様が解説。顧客やデザイナーにとっては、大した変更だと思っていなくても、システム担当から「それをするとリリース日が遅れる」といったネガティブな意見が出るのはなぜか、具体的に説明していきます。
今までのシステム開発の問題点
- システム契約は、請負契約がほとんど。変更が発生して工数が増えるのに、検収条件は変わらない。
- 文書で合意をとる開発方法なので、変更に脆弱である。
- 動作環境が準備できないと、リスクが高いまま開発を進めなくてはならない。
- システム開発で用いる言葉を共通化するのが難しく、曖昧なコミュニケーションで、システム開発者と顧客の認識にずれが生じる。
こうした問題に、システム担当ベンダーと顧客は、どう対処すべきか。高安様は「アジャイル」「API」「マイクロサービスアーキテクチャ」「クラウド」をキーワードに、具体的な解決法を説いていきます。
中でも注目すべきが、APIを用いたアプリケーション構成技術の一つである「マイクロサービスアーキテクチャ」です。これは、アプリケーション一つが機能全体を実現するのではなく、複数の小さなサービスに分割し、それを連携させることでアプリケーションを構成する技術のこと。「アプリケーションの単位を小さくすることで、テストが格段にしやすくなる」と、高安様は語ります。「マイクロサービスアーキテクチャ」は、NetflixやAmazonが採用したシステムとしても、話題になっています。
さらに第3部では、「ウェブ担当者あるある!? ~加速する顧客のライフサイクルに応えるサイト構築の弊害はシステムなのか?」をテーマに、安達様、高安様、弊社・金がディスカッション。
- UX戦略が功を奏して、サイト流入が増加したが、サーバーがダウンした。
- ABテストをたくさん回して、サイトをもっと良くしたいが、環境が追いつかない。
- パーソナライズウェブを実現したいが、今のアーキテクチャでは難しい。
- システム部分だけで予算がなくなってしまった。
といった問題の他、会場からの質問をいただきながら、ウェブ担当者なら思いあたる問題について、解決策はどこにあるのか、理想のUXを実現するために、システムが足かせとならないような進め方、実現の方法について意見を交えました。
セミナーに参加したお客さまの声
- デザインを依頼する立場で、いつもコミュニケーションが円滑に行われていない状況と感じていました。デザインの定義のやり方、共通言語化を早速実践しようと思います。
- 共通言語を設定するフレームワークなどとても分かり易かった。
- クラウドを活用して小さなPDCAを回しながら進めていく方法が良いことを確認できた。
- UX・UIとシステムの観点、それぞれの事例を聞くことができ、イメージが湧いた。
- 事前に想定される事態に対応して設計、開発しておくことが重要だと感じた。
講師

ネットイヤーグループ株式会社
カスタマーエクスペリエンス事業部 ウェブテクノロジーグループ
アートディレクター・UIデザイナー 金 成奎
ウェブデザイナー/アート・ディレクターとして過去5年に渡り事業会社、広告代理店、メディア開発会社などで経歴を重ね、2012年よりネットイヤークラフト (現・ネットイヤーグループ) に入社。
コーポレートサイト、ECサイト、グローバルサイトなどのビジュアルデザイン・アートディレクションを数多く手がける。
株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング
SI事業部 アーキテクチャグループリード(技術統括)
高安 厚思
全社活動およびプロジェクトにて新技術の検証・導入、アーキテクチャ設計、技術的課題解決に幅広く関わる。
近年は「顧客の課題定義」とその技術的な解決を組織で取り組む活動を進めている。2006年より、東京電機大学工学部 非常勤講師。
著書、連載:
・システム設計の謎を解く(ソフトバンク)
・ITアーキテクトのためのシステム設計実践ガイド アーキテクチャ編(日経BP)
・Webアーキテクチャ再入門(日経SYSTEMS) 他多数
株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング
SI事業部 執行役員 安達 邦彦
大規模基幹システムのアウトソーシングや運用品質改善のプロジェクトに多数従事。
中央省庁のクライアントを中心に、システム化企画、政府調達支援、PMO支援、工程管理支援等のコンサルティングに従事。
ネットイヤーグループセミナー事務局について
ネットイヤーグループは、創業からユーザーエクスペリエンスデザイン(UXD)という考え方をもとに、デジタル戦略の策定や実行の支援をしてきました。
弊社ならではの知見を活かし、みなさまのビジネスにお役立ちできるセミナーを毎月開催しています。
ご興味をお持ちいただけるセミナーがありましたら、ぜひお申込みください。
本セミナーに関するお問い合わせ
ネットイヤーグループ株式会社 セミナー事務局
E-MAIL:seminar@netyear.net