「CX向上を実現するためのカスタマージャーニーマップとログ分析の活用法」セミナーレポート
2019年7月11日に開催したセミナーのレポートをお届けします。
顧客とのタッチポイントが多様化する今、顧客の行動や感情を俯瞰しようと、カスタマージャーニーマップを作成する企業が増えています。理想の顧客体験を実現するのに有効なカスタマージャーニーマップですが、実際に顧客体験価値の向上につなげた企業はごくわずかにすぎません。
本セミナー第一部では、企業のウェブサイトやサービスにおけるUX/情報デザインと評価を専門とする宮村和実が登壇。「顧客の本質的な要求を捉えるカスタマージャーニー理解」について解説しました。
続く第二部では、Webアナリスト/コンサルタント、Webビジネス成功に向けたコンサルティングやデータを活用したPDCAサイクル運用を支援する山田直之が登壇。ログデータをUXデザインプロセスに活用した事例や、顧客行動可視化のための分析手法について解説しました。
組織の壁を超えて取り組まなければ、顧客体験価値は向上できない

第一部で宮村がまず取り上げたのが、顧客視点を捉えるためのUXの基礎です。製品に求められるのは、使用時の使い心地だけではありません。優れた製品であっても、開封しづらかったり、購入が不便だったりと、トータルで良い体験が提供できていない例が、数多く見られます。
顧客中心主義は、顧客の体験を点として捉えていては実現できません。トータルで体験を捉えるべきであり、組織、ビジネスの制約を超え、すべての関係者がUXを共通認識として俯瞰的に理解するために必要なのが、カスタマージャーニーマップです。
UXを定義する手法として、セットとなるのが以下の2つ。
・利用者を理解するための「ユーザー定義/ペルソナ」
・利用状況を理解するための「カスタマージャーニーマップ」
ここで宮村が示したのが、ペルソナとカスタマージャーニーマップの例。ペルソナにはカスタマージャーニーマップの材料・ヒントが含まれています。また、ペルソナに立ち返って検証できることが大切です。そしてカスタマージャーニーマップは、様々な関係者たちと同じUXを起点として語り合い、課題を特定し、解決法を考え、解決内容を検証するためにUXを可視化するものであり、その可視化はUXの様々な層(時間軸、行動、思考など)の掛け合わせによって実現しています。
カスタマージャーニーマップの作成については、基本的にはグループワークがおすすめとのこと。それは参加者たちのさまざまな目線でユーザーの体験を捉えることで、彼ら自身がユーザー目線で共感できるカスタマージャーニーマップが作成でき、課題を捉えやすくなるからです。カスタマージャーニーマップの作成を体験し、参加者の意識がユーザー目線に変わることにより、顧客中心で考え行動する大事さに気づくという効果が生まれ、UXを重視するマインドの浸透にも寄与します。なお、作成の目的は、実際のプロジェクトで活用するのか、社員が顧客をより理解するための教育なのか、そこを明確にすることも大切です。
さらに、UXデザインの上流プロセスでもカスタマージャーニーマップが有効となる例と、AsIs(現状)とToBe(あるべき)のカスタマージャーニーマップの違いについても説明。「組織横断的に取り組まなければ、真の顧客体験価値の向上につながらないが、社内だけで取り組むのは難しい。専門家のサポートを受けることで、新たな発見があり、より課題を見つけやすくなる」と結びました。
UX視点×ログ分析で、仮説を立て、課題を発見できる

第二部で山田が取り上げたのが、UXデザインプロセスにおけるログ分析の活用法。UXデザインからみた定性調査に、データ分析による定量調査を組み合わせることで、何ができるのでしょうか。
山田が挙げたのが、以下の2つ。
・仮説検証…UX視点から導き出された仮説をデータで立証できる。
・課題抽出…データ分析を軸に、課題やユーザーインサイトを見つけ出せる。
それぞれをどのように進めるのか、ステップを紹介していきます。多くのアナリストが分析の際によく利用する、基本的な分析軸についても解説。ただし、「分析によって仮説の精度を上げることはできるが、100%の確証は得られない。精度を上げることで施策の成功確率を上げ、最終的にはABテストで相関を見ることで立証することが望ましい」と続けます。
では、Googleアナリティクスで、ユーザーインサイトを見つけるにはどうすればいいのでしょうか。分析の3つのコツが挙げられました。
・ユーザーセグメント…ユーザー行動や属性などによってグループ分けができ、UXデザインプロセスで設定してペルソナやシナリオの検証をすることができる。
・ユーザーの声を聞く…検索ワードがほぼ取得できなくなった今、ユーザーの直接的な言葉を収集する方法は「サーチコンソール」と「サイト内検索」の2つのみ。
・個票調査…セッションを跨いだユーザー行動履歴を追いかけることで、ユーザーの心理変化やそのきっかけなどを探る。
さらに、Googleアナリティクスでは把握できないユーザー行動フローモデルの作成方法や、定性的ユーザーシナリオから導いたKPIの事例についても解説。「データだけでは課題がわからないという例は多い。UX視点とログ分析を組み合わせて、課題や改善ポイントを見つけてほしい」と結びました。
講師

ネットイヤーグループ株式会社
カスタマーエクスペリエンス事業部 UXデザイン部
UXデザイナー 宮村和実
2001年より、ネットイヤーグループ株式会社にてIA/UXデザイナーとして活動。デジタルマーケティングの支援において、様々な企業のウェブサイト、サービスにおけるUX/情報デザイン、評価に幅広く携わる。近年はカスタマージャーニーからUX視点の要求を見出すワークショップに携わることが多い。企業内部へのUX/CX浸透のための教育・啓蒙活動にも尽力している。2017年10月よりUX School学長、また、2019年2月より宣伝会議様にてカスタマージャーニー基礎講座の講師を務める。
ネットイヤーグループ株式会社
カスタマーエクスペリエンス事業部 UXデザイン部 アナリティクスチーム
シニアコンサルタント 山田直之
事業会社において複数のWebサービスおよび新規事業立ち上げプロジェクトに携わった後、2008年よりWebアナリスト/コンサルタントとして活躍。2016年よりネットイヤーグループに参画し、Webビジネス成功に向けたコンサルティングやデータを活用したPDCAサイクル運用支援などを行う。
Net Promoter(R) 認定資格者。Google Analytics個人認定資格者(GAIQ)。
ネットイヤーグループセミナー事務局について
ネットイヤーグループは、創業からユーザーエクスペリエンスデザイン(UXD)という考え方をもとに、デジタル戦略の策定や実行の支援をしてきました。
弊社ならではの知見を活かし、みなさまのビジネスにお役立ちできるセミナーを毎月開催しています。
ご興味をお持ちいただけるセミナーがありましたら、ぜひお申込みください。
本セミナーに関するお問い合わせ
ネットイヤーグループ株式会社 セミナー事務局
E-MAIL:mkg@netyear.net