【セミナーレポート】 スピンアウト企画「DX座談会 オンラインNight」
2020年7月28日に開催した3社共催(IMJ×電通デジタル×ネットイヤーグループ)オンラインセミナーのレポートをお届けします。

7月17日に開催した3社共催セミナーをご視聴いただいた皆様からのご要望にお応えし、デジタル業界を牽引してきたリーダー4名が再結集。理想のDXを実現するためには何が必要か、視聴者の皆様とお酒を飲みながらフランクに語り合いました。チャットに届いた視聴者からの質問にもお答えしています。
■登壇者
・加藤 圭介 氏
アクセンチュア株式会社 マネジング・ディレクター
株式会社アイ・エム・ジェイ 取締役
・小林 大介 氏
株式会社電通デジタル 執行役員 データ/テクノロジー領域および統合デジタルマーケティング領域担当
・佐々木 裕彦
ネットイヤーグループ株式会社 執行役員/デジタルビジネスデザイン事業部長
・石黒 不二代(モデレーター)
ネットイヤーグループ株式会社 代表取締役社長 CEO
DX支援の前に、クライアントのビジネスモデルや収益モデルについてもコンサルティングする?
佐々木:当然すべきです。ビジネスコンサルティングという言葉は広く、データドリブンで数字を変えていくビジネス計画もあれば、サービスドリブンで顧客体験の新たなモデルをつくる例もある。目線をどこにするかがポイントだと思います。
加藤:DXこそビジネスモデルの変革だし、お客さまの行動やインサイトにあわせてつくり変えることが大きなテーマです。その中でオペレーションの高度化、デジタル化の効率化、チャネルのデジタル化など進めていきます。最終ゴールはビジネスを成長・変革させることです。
小林:ただし、巨大なクライアントの場合、基幹のビジネスをガラリと変えるのではなく、新たなデジタルサービスを立ち上げるというのが圧倒的に多いですね。
石黒:サービスポートフォリオの中で、デジタルによって伸ばせるものがあれば、私たちの参入は可能だと思います。
DX推進部ができると、逆に各部門のDXの意識が弱くならない?
佐々木:各部門が日々の業務で予算を達成しなければいけないのに、さらに「DXにも取り組め」は難しいと思います。袴を踏まれながら、「走れ」と言われているようなもの。本質的には、経営に手を入れないと無理です。
小林:DX推進部にも2つのパターンがあります。1つは、DXを進めるのは事業部門で、DX推進室は横串でドライブするパターン。もう1つは、推進部の中で新しい事業をPoC(Proof of Concept)的に立ち上げて育てるパターンです。
佐々木:会社そのものをガラリと変えるよりは、どこかでインキュベーションさせて進めるほうが、自由度は高いですね。
加藤:DXには瞬間的なパワーがかかる。ずっとパートナーに頼りっきりではなく、新たな業務モデルや人材の教育が必要になります。中の人材を育成するか、外から採用するか、ある程度の内製化も必要です。
佐々木:でも、うまくいっても認知されず、本流になれない例も多い。戦略的な次のステップがないと、ノウハウを本流に持ち込めずに、サンドボックスのままか、その人たちが辞めてしまうかとなる。
石黒:クライアントからの要望は、「新規の部門をつくって、そこのデジタル系サービスをつくってください」まで。でも、重要なのはその後の定着です。
加藤:コンサル側が設計図だけ描いて終わりでは、定着化しないし、何も変わりません。こちらからオンサイトで人を送り込み、クライアントとワンチームになることでスキルもマインドも共有できる。そうした取り組みを中期的に進めることが必要です。徐々に社内でできることが増えて、人材育成にもつながります。
石黒:デジタルのメディアをつくっただけでは定着しませんよね。
ここ数年でクライアントのデジタルリテラシーが高まり、人材も育っているが、仕事の発注の仕方は変わってきた?
小林:変わってきています。昔は、中途入社は少なく、部署もローテーション。マーケティングやデジタルの専門スキルを持つ人はわずかでしたが、ここ数年で増えました。
加藤:事業会社と我々のようなコンサルティング会社で、人材の流動化があるのはいいことだと思います。
石黒:でもアメリカ等に比べると、まだまだ日本の流動性は低いと思います。
佐々木:事業会社で経営層まで上っていく人は、ほぼジェネラリストのプロパー社員。中途で入社したデジタルに強い社員のキャリアプランはなく、これ以上、上にはいけないことに気づく例も多いです。
石黒:もう少し経つと、変わってくると思います。ITがわかる人でないと、トップに立てなくなる時代が来るのでは。特にDXが必要な業界ってどこでしょうか?
佐々木:行政は気になります。今起きている問題も、パートナーへ発注している人の責任大だと思います。正しくインプットしてくれないと、正しいアウトプットはできない。
石黒:今コロナで影響受けている企業は、DXを欲しているのでは。海外旅行、アパレル、エンタメ、外食……。
小林:中国の起業家には、如何にデジタルで国民の生活を豊かに便利にするかという志がありますが、日本はすでに豊かで便利な国だとほとんどの人が思っています。新しいDXをつくろうというモチベーションが低いのは、そのせいかも。
佐々木:日本が高いシェアを誇る業界こそ、DXに取り組んでほしい。ハードウェアを売り切って終わりではなく、その後をどう資産に変えるか考えないと、クラウド化で性能が重要ではなくなったパソコンメーカーと同じことが起きると思います。自動車も、走行能力が重要じゃなくなり、自動車メーカーよりクラウド側のソフトウェアメーカーのほうが重要になってくる。どうにかしないと、儲かるのはプラットフォーマーや、シンクライアント型のハードウェアを持つところだけになる。その認識が、日本のメーカーは甘いと思います。
DXって手段じゃなくて、目的なの?
石黒:DXは目的ではありません。DXによって会社を成長させる、DXによって会社が顧客のために良いことをする。それが目的です。
小林:DXを進めるには、自分が勤める会社が好きというのもポイント。この会社は何のために存在しているのか。何のためにサービスを提供しているのか。デジタル化した時代に、どうサービスを変えたら会社の使命を達成できるのか。そうした発想、姿勢で考えることが大切です。DXに取り組まないと生き残れない、競合に負ける。そういうことではなく、デジタルを使えば、もっといいものを世に送り出せるということだと思います。日本のUXは貧しい状態なのに、貧しさが認識されていないのも、ドライブがかからない原因かも。
カスタマーサクセスとDXとの関係性って?
佐々木:DXが手段なら、カスタマーサクセスは目的。すべての企業は、お客さまを成功させるべき立場に立っています。お客さまを成功へ導くことが、企業の存在理由です。今DXしないと、カスタマーサクセスが提供できない世の中になっています。
例に挙げたいのがテスラ。買った瞬間に価値が下がるのではなく、価値が上がる車を提供し、最終的にはライドシェアまでしてくれる。カスタマーにサクセスをもたらすのが、デジタル化された会社です。
Netflixも、見ていないユーザーの自動解約をするというのは、カスタマーサクセスの考え方。映像を楽しんでいただくことがカスタマーサクセスなので、そうでないお客さまからはお金はいただきませんと。
加藤:そこには志があります。
佐々木:例えば、自動車の損害保険会社。事故が起きた時にどれだけ早く駆けつけられるかを競っていますが、お客さまは早く駆けつけてほしいというより、そもそも事故を起こしたくない。事故を起こさないようサポートするのがカスタマーサクセスではないかと思います。そのためにDXが手段として必要です。
石黒:その損保会社の例だと、手段は何になるのでしょうか。
佐々木:運転のデータを集めて、危険な運転をしているドライバーに通知し、事故を抑止するサービス。
小林:事故がよく起こる場所にアラートを出すこともできます。
加藤:生命保険会社も同じですよね。何かあったときに保障するのではなく、未然に防ぐ健康管理にサービスを移しています。
社内の人材をDX人材にするには、どんなスキルやケイパビリティが必要?
小林:一つのスキルでは、DXは実現できません。これがDX人材と言い切るのは難しい。デジタルやデータなど、基礎的な素養はもちろん必要です。インターネット、デジタル、データがもたらす地殻変動。そこは素養としてインプットされていなければいけないと思います。とはいえ、それを知っていたからって、DX人材になれるかというと……うーん。自分の会社が好きで、自分の会社をどう変えたいか、パッションみたいなものが必要。
加藤:いろいろな新しいサービスを実体験で利用することは、すごく重要で説得力あります。スキルや経験以上に、自分で体感してみること。
DXの本質はデジタルでなく、消費者や外部環境の変化に対応できるサービスづくり、それをつくれる組織体制や文化にあると思う。それに対して、どう取り組んでいる?
石黒:DXって、本当にトップが思い入れを持って動かないと、変わらないですよね。
加藤:そうでないと、社員やメンバーの意識も変わりません。KPIや評価システムなどの見るべき指標を変えると、社員の行動が変わることはあると思います。例えば、店舗の販売員が売り上げではなく、リピート率や継続率を追うだけでも、お客さまと長く取り引きすることを重視するように変わってくる。結果的に、文化や行動を変えることにつながると思います。
石黒:今夜の話で、勇気もやる気も出ました。この3社で日本企業のDXを牽引できるよう、今後も頑張っていきたいと思います。どうもありがとうございました。
2020/7/17に開催した3社共催(IMJ×電通デジタル×ネットイヤーグループ)DXセミナー第1弾のセミナーレポートはこちらからご覧いただけます。
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