あるあるビッグデータ in Digital Marketingシリーズ – SEASON 2:デジマ用語辞典(ビッグデータ分析編) – 第1話「行動分析の始まり」
こんにちは。お久しぶりです。金澤です。
年末年始と渡米でバタついてしまい、記事をおろそかにしてしまいました。。。
また精力的に再開いたしますので、何卒宜しくお願いします。
ニューヨークは1月23日のブリザードの余波も全然なく、みんな普通にエンジョイしているようです。ある意味めちゃめちゃはしゃいでいましたね。タイムズ・スクエアでスノボをする強者まで出てくるあたり、アメリカですねえ。
ともあれ、前回までの「あるある」シリーズは一旦小休止して、こちらのコーナーを並行させていきたいと思います。というのも、何人かの読者の方から励ましのお便りとともに、「部下に突っ込まれる前にこっそり学習できるビッグデータのTIPSとかやってくれ」とのリクエストを受け、“飯イチ”で引き受けた次第です。ちなみに私は渡米中なので“飯イチ”は延期になります。中止ではありません。大事なことなのでもう一回言います。中止ではなく延期です。
ともあれ、これから継続的にビッグデータ・マーケティングにまつわる専門用語やバズワード、概念などについてお話ししていきます。
まず、初回は、行動分析に関する概論と共に関連キーワードなどを説明していきたいと思います。
1. 概論
前回までの「あるある」 でも書きましたが、マーケティングにおいてビッグデータでやりたい分析というのは、「次にAさんが何を買うか」を予測し、「Aさんと似た行動をするBさん」に予測を代入するための方程式を見つけるために行います。
つまり、人の行動を予測するためにビッグデータが活用されます。もちろん、業務効率を上げる。とか、意思決定の精度を上げる。という論点もありますが、非常に広義にくくってしまえば、それらも全て人の行動に作用するためのものです。
行動予測のターゲットが顧客であるか、中の人であるかの違いでしかありません。ともあれ、マーケティングにおける行動分析は、良い成果を得るために、ユーザーの最適な反応を予測するために行われるということです。
決して、分析が目的になってはいけません。
では、この行動予測とは、端的に言うとどういうことでしょうか?その前に、幾つかのキーワードやトリビアを説明しながら、行動予測、行動分析を紐解いていきましょう。
2. ビヘイビアってなんだ
しばしば、分析の世界において、「行動」のことを「ビヘイビア」と呼んだりします。
もう既にトレンドワードの時代も過ぎてしまったかもしれません。ビヘイビア=Behaviorを辞書で引くと大抵、振る舞いと書いてあります。我々日本人にとっての「振る舞い」という言葉は、「人が見ている前でのお行儀」のニュアンスで捉えますね。実際そういうニュアンスも言語にはあります。例えばアメリカ人に”Hey, behave yourself!”と言われたことがあるあなた、相当お行儀が悪いですよ。
ただ、この言葉は科学用語だと「反応」「作用」に近いニュアンスになります。例えば、機械や物質が特定条件下で見せる動きのことを表したりします。分析でいうビヘイビアはこちらのニュアンスが強いですね。マーケティング分析ではさらに分かり易くするために、しばしば「行動」と訳されます。つまりビヘイビア・ターゲティングと行動ターゲティングは同じ意味です。
つまり、ユーザーの振る舞い→特定の刺激(広告など)を受けた、特定の環境(サイトなど)でのユーザーの行動のことをビヘイビアと言っています。ですので、行動分析とは、英語でいうBehavior Analyticsのことであると言えます。これから先で使う「行動分析」はビヘイビア分析、つまりユーザー反応の分析と同義だと思ってください。
3. 行動分析のルーツは「反」フロイト-ユング
元々、学問としての行動分析は、心理学体系の一つから来ています。
かの有名なフロイトやユングは、対話によって深層心理を引き出していくデプス・インタビューの始祖とも言えます。
彼らは元々精神分析学者ですから、精神世界の構成を探ります。夢分析や心的外傷(トラウマ)など彼らの有名な功績は、基本的にはインタビューから導かれた仮説ですので、実は検証が難しい。
フロイトは人間の心理を、自我(エゴ)、超自我(スーパーエゴ)、無意識(エス)に分け、人間の行動はこれらが混じった形で誘発されるものだと説きました。もの凄くざっくりいうと、自分の好き嫌いと、親の好き嫌いと、動物本能が個人の行動を駆動させていると。この駆動要因たる心理を明らかにするために、基本的にはインタビューをしていきます。で、特に無意識の部分を引っ張り出すために、催眠療法や夢インタビューをする訳です。
インタビューに基づく仮説には必ずバイアスが存在します。つまり、インタビューする人にも受ける人にも思考バイアスがあります。もちろん、施行者は可能な限り客観的な結果を導くように努力しますが、ゼロにはできません。
実際、フロイト自身は無神論者であり、逆にそこに頑なすぎて宗教的インパクトを要因から否定する傾向があったそうで、これも十分な思考バイアスです。逆にユングはこれを否定して袂を分かったのですが、彼は彼で、師匠であるフロイトへのアンチ・バイアスがあるのではないかとも言われます。なので、彼らの考え方はしばしば、多分に宗教や時代背景によるバイアス(偏った思考)がある、という批判にさらされ続けます。つまり、「検証できない以上、科学ではない」という批判です。そして、このフロイト、ユングの精神分析に対抗する形で出てきたのが、行動主義心理学です。
ちなみに、このフロイトの理論がわかりづらい場合は、ヱヴァンゲリヲンのシンジ君の行動変化を観察してみてください。エスもエゴもスーパーエゴもしっかり表現されていますよ。(笑)
参考文献: 人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス(ジークムント・フロイト)
アインシュタインとの往復書簡を含む、上記のエゴやエスを説明した著作です。やや難解かもしれませんがマスター版の4000円よりはお得です。お暇な方はこれを読んだ後にヱヴァを見て検証してみてください。
次回は行動主義心理学からご説明します。

ストラテジック・フェロー 金澤 一央(記事一覧)
・I-COM Data Creativity Awards 審査員
・ニューヨーク大学大学院、School of Professional Study, M.S. Integrated Marketing在籍中
・主な講演・セミナー・寄稿等:日本経済新聞社、JADMA、インプレス、ビジネスブレークスルー大学など
ネットイヤーグループ、オンラインメディア測定に関する国際団体「I-COM」が主催する国際コンペティションの審査員に弊社金澤、コストフが就任(2015年4月17日)