世界中の企業が悩むマーケティングと営業の断絶
こんにちは、シニアディレクター兼B2Bマーケティングプランナーの神田です。
あなたはSales Rejected Leadという言葉を知っていますか?

マーケティングの世界において、共通の課題が存在しています。みなさん、それはなんだと思いますか? それは「マーケティングの部署と営業の部署の断絶」です。「そうそう。うちの会社がまさにそうだよ」という声が聞こえてきそうですが、この問題、日本だけでなく、世界規模で発生しているのです。そのため「Sales Rejected Lead」なんて言葉が、すでに存在していたりするのです。
Sales Rejected Lead。もしくは Sales Denied Lead。はたまたSales Disqualified Lead。Salesは営業を意味し、Leadはリードを意味します。Rejected、Denied、Disqualifiedはそれぞれ「拒否する」という意味を持ちます(Disqualifiedは「失格」ですが)。
つまり、日本語に訳すと「営業が拒否したリード」ということですね。こういう言葉が”英語”であるということは、英語圏では「営業が拒否したリード」というのがけっこう大きな話題になっているのです。
「おいおいおい。そんなことを言ったら、ビジネスが成り立たないだろう。アメリカの営業マンって映画『摩天楼を夢みて』みたいな、過酷だけれど、数字を作った人間には夢のような世界なのじゃないのか?」と思ったりしてしまうのですが(ワタシもですが)、どうやらそうでもないらしいです。
6sense(https://6sense.com/)の調査によると「営業はマーケの部署からやってくる80%のリードを拒否している」というのです。
ちょっと古めの2015年の調査データですので、この数値は改善されているかもしれません。ただ、改善されているといったって、80%がいきなり0%になるわけでもなく、ある一定量のリードは営業が拒否していることに変わりはないと思われます。
せっかくマーケティングの部署からトスアップされたリードを拒否しちゃうなんてもったいないですよね。そう思う一方で、「課された数字は必ず達成しなければならない環境に追い込まれたら、そりゃ、自分をまずは信じますよね」。そんなことも、一時期、日本屈指の営業会社で働いていた経験を持つワタシは想像できたりもします。
数字。これに追われると、人間、しゃかりきになってしまうのですよね。でも、数字に追われているのは営業の部署の人間だけでなく、マーケティングの部署の人間も同じなのですよね。
数字と言葉の認識を合わせて、断絶を解消させましょう

では、どうすればその断絶を解消させることができるのでしょうか? その解答、実はものすごく簡単だったりします。それはマーケティングと営業の数字と言葉に対する認識を合わせることです。たったそれだけです。
「え? それならやってるよ。営業としては今月10件のリードがほしいということをマーケに伝えて、マーケもその数字をKPIとしいて活動してるよ。」
このような反論が出てきそうですね。ただ、これではマーケと営業で数字と言葉の認識を合わせているようで、実はまったく合わせてなかったりするのです。
リード10件の「10件」の定義をしていますか? そもそも、トスアップするリードの定義ってしていますか?
ここから問題を深掘りしていきます。マーケティングと営業の断絶が起きている会社の多くでは「トスアップするリードの定義」がなされていないことがほとんどです。「いや、ホットリードをトスアップするって事になってるし…」と言われたりもするのですが、そのホットリードが数字で定量的に定義されていないから、「いや…あんなリード渡されても困るよ」「え?ホットリードでしょ?」「どこが?(もう、マーケからのリードはいらないよ)」となってしまうのです。
ちなみにですが「ホットリード」の「ホット」の定義とは、”商談化しやすい”リードだけではだめですし、”商談のアポが取れたリード”だけでもだめですからね。まずは”商談”を定義しなければならないですし、”しやすさ”も定義する必要があるのです。
マーケにとって商談とは「自社製品を紹介する場」という認識であっても、営業にとっては「価格を提示し、値引き交渉をする場」という認識であったら、そもそもの会話が成り立たないですからね。「商談」という言葉の定義も、マーケティングの部署と営業の部署で合わせておく必要があるのです。
後工程はお客様。トヨタ式の精神で断絶を解消!

では、なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか? 萩原張広さんは著書『少人数チームからはじめる失敗しないB to Bマーケティングの組織と仕組み』の中で「アポ取りから受注後の顧客フォローまでをすべて営業マンが担当して、分業がなされていない」のが問題だと、述べています。
リードの開拓から、リードの見極め、商談機会の創出に、初回訪問、そして契約までを一人の営業マンで行っていれば「俺が行けると思ったお客さんはいけるんだよ~」ということで、【どんな状態の担当者から商談機会が生まれると契約に持っていきやすいのか?】なんてことを定量的に定義したりしないわけです。
ここを「一人で営業活動をするのではない」という認識を持ち、「どういう状態のリードであれば契約率が上がるのか?」ということを数字で定義するのが断絶解決の第一歩になるのです。
マーケから営業に受け渡すリードの状態を定量的に定義し、その定義に合致したリードだけを、営業が喜ぶ情報とともに渡す。こうすることで、マーケと営業の断絶は解消されます。
後工程に喜んでもらえるモノやサービスを提供すること。まるで「後工程はお客様」というトヨタ式のような考え方で、マーケから営業へリードをトスアップすることで、世界的に問題になっているマーケティングと営業の断絶を解消することができるのです。
断絶改善に向けて、まずは、「同じ会社だから」という先入観を捨てて、言葉と数字の認識合わせから始めることをおすすめしますよ。
参考
Survey says…Sales rejects 80% of marketing-generated leads
『摩天楼を夢みて』
『少人数チームからはじめる失敗しないB to Bマーケティングの組織と仕組み』
『リードビジネス“打ち手”大全 デジタルマーケで顧客を増やす 最強の戦略86』
品質保証の考え方「後工程はお客様」とは?
トヨタ式人づくり~お客様のために何ができるかを考える

趣味は子育て。特技は子供のための料理。子供と過ごす時間を最大化するには生産性向上しか無い。生産性を向上させるためには、自信&自社だけではなく、お客様のB2Bマーケティング力を向上させるしか解決策はない! と、妙な使命感に燃える40代。人に優しく・地球に優しく・そして自分に一番優しくをモットーに、日夜業務に勤しんでおります。