その付加価値、ホントに必要?
UXチームの野木です。
他のメンバーのようなUXの専門家というわけでもないので、少し視点を変えた内容を書いてみます。
帰国して感じた日本の快適さ
さて、ボクは昨年(2014年)の11月から3月末までの5ヶ月間、有給休暇と休職を取らせてもらい、フィリピンで英語学校、その後、中南米と南米を旅してきました。その間の体験を元に、帰国して感じたことを書いてみます。
「あ、自動販売機がある!」
帰国して、成田空港を出て最初に思ったことでした。
5ヶ月も日本を離れてしまうと、日常の感覚が外国仕様にすっかり慣れてしまいます。向こうでは24時間営業のコンビニもないし、お店で紙幣を出すと「ピッタリないの?お釣りないんだけど」みたいなことが当たり前。改めて日本ほど便利で安全な国はないと感じました。
ただ、5ヶ月間の海外生活で体に染みついた感覚からは、「それ、ホントに必要なんだっけ?そこまで快適じゃなくてもいいんじゃない?」などと思うことも。ちょっと過剰というか、無理矢理サービスを生み出している虚構(虚サービス?)のようなものも多いんじゃないかと。
グアテマラのローカルバスで思ったこと
写真はグアテマラの通称チキンバスと呼ばれる現地のローカルバスです。座席は観光バスのような2人掛け(ベンチシート)のため、座れない人はすれ違うのが精一杯くらいの狭い通路に立ちます。
混んでくると、「すみません、詰めていただけますか?」(実際はそんなことは言わずにグイグイと)という感じでみんな座ってくるのでぎゅうぎゅう詰めの3人掛けに。大きめの人が横にくると、もう体同士は席で密着。暑い国なので、だいぶ不快です。できれば細身の若い女性が座ってきてくれないかなぁ(笑)とか思いながら乗っていました。
失ったものの中に、アイデアの種があるかもしれない
UX視点でこの体験を語るのは若干無理はありますが、日本で今の時代にこんなバスに乗ったら、Bad Experience極まりない印象になりますよね。でも、個人的には、譲り合う気持ち、というか譲り合うのが当然という環境を体験できたのはとても新鮮でした。
日本では薄れてしまった、「見知らぬ人同士が助け合う」みたいな気持ちがよみがえった感じです。いろんなことが快適になった反面、それによって失われてしまった大切なことって少なくないんだろうな、などと思った次第です。
そうやって失われていくものを、作り手がもっと意識していくと面白いなと思って。たとえば、iPhone(=スマートフォン)の誕生によって、電車の窓から外の風景を「ぼーっと」眺めるあのなんでもない時間は失われてしまいました。もともと「ぼーっと」しているだけの時間なので、「どーしてくれる!」などと文句を言う人もいないわけですが、快適さや利便性と引き替えに失われた部分に着目するのも、新しい体験を考える上でのヒントになるんじゃないかと。
生み出す価値の強度や寿命について
ボクらの仕事は主にデジタル領域を扱っているわけですが、デジタルって、歴史が浅いがゆえに、新しい体験への創造やチャレンジがもてはやされがちで、その恩恵のみが大声で語られる傾向にあるのは否めません。
一方で、プリミティブなフィジカル体験を薄めている側面は確かにあるので、そこをもう一度埋めていく体験が必ず求められると思っています。
(個人的には、そこは結構重要だと考えていますが、デジタルネイティブの若い人たちは全く違う感覚だったりするかも。。このオッサンなに言ってんだと。)
世の中の課題を解決すると言ったら大げさですが、UXデザイナーは、課題に対しての直接的な解決だけでなく、長い時間軸も視野に入れた「人や社会にとって本当に大切な価値」というものを問い続ける姿勢を持って欲しい。根底の思想と言ったらいいのかな。それがあるかないかで、生み出す価値の強度や寿命が確実に変わってくるはずなので。
だいぶ強引にまとめに入った感もありますが、5ヶ月間の旅で思ったことをつらつらと書かせていただきました。次回は定量分析と定性分析の融合をテーマにした記事を、メンバーが発信する予定ですのでご期待ください。

デジタルマーケティングプロデュース事業部
ソリューションデザイングループ UXチーム
チームリーダー 野木 博司( 記事一覧 )
2001年、ネットイヤーグループ株式会社に入社。前職はコピーライター。課題の本質を洞察し、クライアントとターゲットの間にどんなコミュニケーションが発生したら良いかを考え、実施することが主な業務領域。旅するクリエイティブディレクターをめざす、ネットイヤーグループの人っぽくない人。
UXチームについて
クライアントビジネスの課題の本質や、誰も気づかなかった課題を、ユーザーの行動データやインタビュー、経験知から導出・発見。その課題解決に向けて、ユーザー心理・行動に沿った最適なシナリオを描き、それを具現化するコンテンツや機能、ソリューションを設計(デザイン)していくチームです。経験者絶賛募集中!