社内スキルアップのためのUXデザイン教育 part 2
UXデザイングループの宮村です。
2016年5月に「社内スキルアップのためのUXデザイン教育とコツ」という記事を書きました。PVを見るに多くの方に興味を持っていただけたようで、読んでいただいたみなさま、ありがとうございました。おかげさまでUX視点を持った人材の育成や、UXデザインアプローチの社内における受容度向上に関心が増えてきていることを実感しました(実際、弊社のUXセミナーを行うと、参加者の方からこのテーマでのお話を伺うことが多いですね)。その後、2016年上期にUXトレーニングをアップグレードして再実施しましたので、簡単にご紹介したいと思います。
UXトレーニングver.2の概要
次のUXトレーニングでは
- ユーザー定義を行いやすくしよう!
- インタビューを体験させてリサーチの大事さを知ってもらおう!
- プロトタイピング&ユーザーテストの大事さも体感してもらおう!
(前回はユーザーのセグメント軸を考えさせるところが特に鬼門でした)
という3点を強化することにしました。
そのため、以下のステップでスマホアプリを考えるUXトレーニングに変更しました。

これは、「そもそも誰になにをするべきか?」という要求事項をユーザー視点で見出すための弊社サービス、UX Accelerator と同様のステップで、まさにUXデザインアプローチのエッセンスが詰まった内容となっています。
UXトレーニングver.2でやったこと
テーマは「お店の売上に貢献するスマホアプリを考える」こと。商店街によくある普通の地元のお店を題材に、客単価とリピート増に繋がるアイデアをスマホアプリとして考えてもらいます。ステップは以下としました。
リサーチ
1.お店を考える
2.対象となるお客さんを考える
3.仮説で想定したユーザータイプを元にインタビューして実際のお客さんを知る
プランニング
4.インタビューを踏まえてペルソナを作成する
5.インタビュー内容とペルソナを踏まえてカスタマージャーニーマップを作成する
6.カスタマージャーニーマップからユーザーの要求事項であるUX要件を洗い出す
7.UX要件を踏まえてアプリのアイデアを考える
プロトタイピング
8.画面フローを作成する
9.プロトタイプを作成する
10.ユーザー評価のための評価シナリオを作成する
11.プロトタイプをユーザー評価する
12.プロトタイプを改善す
これらのプロセスを、弊社UXデザイングループのスペシャリストがそれぞれ各クラスに分かれて講師を務め、グループワークや個人ワークを織り交ぜながら進めていきました。その中でポイントとなった点を紹介します。
1.アイスブレイクでチームビルディング

最初にアイスブレイクも兼ねて、対象となるお店をグループワークで作成することにしました。各クラスそれぞれ、初めて会うメンバーのため、最初のグループワークでワイワイ楽しみながら、お店の定義をペルソナ的に行ってもらう趣向です。自分たちのお題をみんなで楽しく作ることで、最初の達成感を得られ、かつ、ワクワクしてもらうことができました。お題がお仕着せのものとならず、参加者たちが受け入れやすいという点も利点です。自分たちの考えたお店のために、高いモチベーションと楽しい雰囲気でUXトレーニングに向き合ってもらえました。このように、ワークショップでの最初のアイスブレイクはとても重要です。
2.インタビューでユーザーを知る

自分たちが仮説的に定義したユーザーを踏まえて、近しいユーザーとなる人物を社内で探してもらい、ユーザーインタビューをしてもらいました。ペアワーク(インタビュアーと記録係を交互に行う)を行います。実際にインタビューをしたことで、「こんなユーザーがいるんだ」「こんなこと考えているんだ」「こんな特徴があるんだ」「こんな状況なんだ」といったことをリアルな実感として理解してもらえました。その理解をもってペルソナを作成してもらったため、特徴をうまく捉えた質の高いペルソナ像を生み出す体験をしてもらうことができました。また、インタビューの詰めが甘いとその後のペルソナ作成に影響が出ることを痛感した方や、インタビューの難しさを実感された方もいて、リサーチの重要さを体験できた非常に有意義なプロセスでした。
3.カスタマージャーニーからUX視点での要件を見出す

カスタマージャーニーマップでユーザー体験を可視化していく際、生み出された体験のストーリーの中から、UX視点でポイントとなる要件(ユーザー要求/改善点/提案機会となるUX要件)を見出すことが特に重要となります。UX要件を見出して記述する部分では、前回のUXトレーニングの参加者同様、思わず施策を先取りして考えてしまう参加者も多く、みなさん難しさを感じていました。このプロセスは肝であるがゆえにUXデザインのスキル・経験が問われます。だからこそUX要件をユーザー体験から抽出することは難しいのですが、その難しさを実感するにとどまらず、見出すためのヒントを得てもらう必要がありました。
ここでは、カスタマージャーニーから施策にいきなり落とし込むのではなく、カスタマージャーニーの中で何が求められているのか? ユーザー体験の中で何を満たしてあげるべきなのか? を本質的に捉えて見出さなければいけません。悪戦苦闘しながらも、UX要件を導き出すプロセスを体験できたことは大きな学びとなりました。

5.プロトタイプを評価して改善する

アプリのアイデアのUIスケッチを作成し、オンラインツールを用いてプロトタイプ化した上で、ユーザー評価を行いました。アイデアがユーザーの要求を満たしているのか? ユーザビリティ上の問題はないか? などを洗い出すことで、ユーザー評価の大事さを実感してもらいました。また、そこで見えてきた課題を分析して、改善アイデアを検討し、プロトタイプを改善するところまで行いました。ユーザー評価→改善のプロセスによって、自分が考えた最初のアイデアのままでは常に問題があり、それを簡易な手法でもいいので評価・改善することからより良いアイデアに昇華できることを実体験した参加者たちは、頭だけでなく身体で学んで身に沁みたと思います。
おわりに
前回のUXトレーニングからさらに一歩進めて、リサーチとプロトタイピングというプロセスを強化したプログラムとしたため、UXデザインプロセスを実体験から理解しやすい内容に昇華することができました。おかげで、UXデザインアプローチやUX視点の重要性を実感し、活用するマインドを高めた人材がさらに増えました。
現在、様々なチャネル・タッチポイントで企業と接触し横断的となっている顧客体験を成果の伴った価値あるものとしていくためには、関係部署のみなさますべてがユーザーエクスペリエンスを重視した上で、戦略検討・企画・施策群の実行を行う必要が出てきます。デジタルマーケティングや企画に関わる部署の方々のみならず、他の部署も交えて社内横断的にこのようなUXデザインプロセスに関する教育を行うことで、ユーザーエクスペリエンスを重視するマインドが形成されるものと思われます。UX視点を重視するための社内教育・啓蒙に関心を持たれている担当者の方がおりましたら、ぜひご相談ください。

カスタマーエクスペリエンス事業部
UXデザイングループ
UXデザイナー 宮村 和実 ( 記事一覧 )
2001年より、ネットイヤーグループ株式会社にてIA/UXデザイナーとして活動。情報アーキテクチャやユーザーエクスペリエンスデザインの専門家として、UX/UI設計や評価に従事している。クライアントやパートナーなど関係者を巻き込んで、設計のディスカッションを行うことが多い。また、社内でのIA/UX教育も進めている。
UXチームについて
クライアントビジネスの課題の本質や、誰も気づかなかった課題を、ユーザーの行動データやインタビュー、経験知から導出・発見。その課題解決に向けて、ユーザー心理・行動に沿った最適なシナリオを描き、それを具現化するコンテンツや機能、ソリューションを設計(デザイン)していくチームです。経験者絶賛募集中!