事例 三井不動産株式会社、三井不動産商業マネジメント株式会社
CRO分析を活用した、ネットイヤーグループの施設横断型Webサイトの運用支援
コンセプトである「Growing Together」のもと、日本全国の地域コミュニティに合わせ、多種多様な商業施設を手がける三井不動産株式会社と三井不動産商業マネジメント株式会社。両社が運営する施設には、三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAYのような「リージョナル型ショッピングセンター」のほかにも、「都市型商業施設」、「三井アウトレットパーク」、「ライフスタイルパーク」などがあり、その総数は88施設 (2024年3月1日現在) にも上ります。
ネットイヤーグループは、PMO(Project Management Office)の参画により、複数の施設を横断したプロジェクトの推進を担い、効果的な運用と改善プロセスを確立。現在も、CRO(Conversion Rate Optimization)分析を提供する専門チームと連携し、定量と定性の両面からサイト改善を行い、Webサイトの品質向上とUXの向上を実現する施設・業態横断型のWebサイト運用支援を継続しています。
クライアントが抱えていた課題
88施設のWebサイトは、それぞれ異なる制作会社が運営しており、三井不動産グループ内での担当者も異なります。また、各商業施設には複数の出店者が存在するため、ステークホルダーの数も膨大なことから、以下のような課題を抱えていました。
- Webサイトの分析が十分でなく、PDCAサイクルを適切に回せていなかった。
- 多数のサイトが存在するため、施設を横断的した施策の実施が困難だった。
- 関連会社が複数あり、Webサイト運営の統括役が求められていた。
プロジェクトの成果
- 定期的な定性・定量調査により、施設サイトの課題を抽出。優先順位ごとの改善案を提示することで、Webサイト運営のPDCAを効果的に回せるようになった。
- PMOと分析チームが連携し、分析結果にもとづくWebサイトの改修を継続的に行い、Webサイト利用者のユーザービリティ向上に貢献している。
- A/Bテストで効果の高かった施策を全サイトへ展開するという好循環が生まれた。
ネットイヤーグループの提案
ネットイヤーグループが初めに提案したのは、複数の施設サイトにまたがる情報を統合するPMOの参画です。現状を整理し、スムーズな進行を確保するための体制構築や、運用フロー、ルールなどの運用定義を策定し、さらに、PDCAサイクルの基盤を整備しました。これにより、サイトの効果的な運用や改善のためのプロセスが確立されました。
現在も、PMOを中心にCRO(Conversion Rate Optimization)分析を提供する専門チームと連携しながら、さまざまなサイト改善を進めています。
毎月の定量分析を始め、必要に応じてヒートマップ分析、簡易ヒューリスティック分析、競合サイト分析など、定量と定性の両面から改善提案を行い、仮説検証(ABテスト)などを経て実装する。このようなPDCAサイクルによりWebサイトの品質向上とUX向上を支援しております。
施策例:トップページのリニューアル
「スッキリと視認性を考慮したデザイン」をコンセプトに、トップページをリニューアル。それに伴い、デザインガイドラインも刷新しました。毎月の分析結果を踏まえ以下を実現しています。
- 隣接する要素の余白を十分に確保し、文字サイズに強弱をつけて情報のまとまりがわかるようにし、さらに1画面内での情報量を増やすため、各要素において横スライドUIを採用した。
- 各要素のタイトルが認識しやすいように、和文のみに統一。
- 特に印象づけたいエリアをダイナミックに扱うため、目立たせたいエリアだけに背景色をつけた。
- 重要なボタンなどは視線誘導を強めるために、メインカラーの露出を上げた。
施策例:6つボタン改修
リニューアル後の分析により、閲覧数の多いスマートフォンのトップページで表示される6つのメニューボタンの改修を提案。多くの施設サイトで活用されているページを分析しメニューを見直し、リンク先の情報がよりわかりやすいテキストに変更したほか、アイコンのデザイン変更およびフォントの拡大を実施しました。
まずは2施設でトライアル検証を行い、数値的な改善が見られたことから、全施設へと展開しました。
サイト内で活用の高いページをわかりやすく表示することで、下層ページへの導線を強化。この改善により、ユーザーエクスペリエンスが向上し、サイト全体の閲覧性とナビゲーション性も向上しました。
施策例:フロアガイドの改善
スマートフォンサイトのフッター固定メニューからの遷移数が多いフロアガイドページに着目し、ヒートマップ分析の結果、「フロアMAPを何度も押下する動作が見られたが、MAPを押下しても拡大されないため、ユーザーがストレスを感じている可能性がある」「拡大するための『+』ボタンがファーストビューから見切れていることに加え、小さく目立たないため、PDFボタンを押下するユーザーが多いと思われる」ことがわかりました。
そこで、ネットイヤーグループは以下の改善策を提案しました。
- 地図の拡大表示と簡略化(初めから拡大表示をしておく)
- 拡大ボタンの強調(目立つようにデザインを変更)
- フロアガイドと同時に見られるショップ一覧への誘導リンクを追加
これらの施策を行なった結果、次のような改善が見られました。
- 改修前は「+」ボタンよりもPDFボタンが活用されていたが、改修後は「+」ボタンのクリックが上回った。
(「+」ボタンのクリック率が0.5%から2.3%に上昇) - 滞在時間やエンゲージメント率も上昇した。
今後の展望について
今後も定期的な分析にもとづく、Webサイトの改善を継続的にご支援して参ります。また、関連するプラットフォームを横断した利用者動向との比較分析も含め、Webサイトの来訪者のカスタマージャーニーを描きながら、A/Bテストによる効率的・効果的な改善を図っていきたいと考えています。
ご担当者様からのコメント
さてどこから改善していくべきか?という道筋が定まっていない状態から相談をさせていただきました。
課題整理の手法と対応案についてご提案をいただいたことに始まり、現在3年以上ご支援をいただいています。
弊社商業施設の特徴として、各施設HPの掲載内容や構成が「郊外型のららぽーと」「生活密着型のららテラス」「三井アウトレットパーク」等、業態によって異なります。その様な前提を踏まえて検討いただいた結果、まずそれらを横断的に分析するフォーマットとレポートを作成いただきました。これによりPDCAが回しやすくなりました。
加えて、ユーザーへの情報を届けやすくすべく、シンプルなUIに統一したリニューアルも行うことになりました。上述の通り業態によって特徴や構成が異なるため、運用や業態特性にマイナス影響が出ない範囲で対応する必要があり、見た目以上に地道で難しい改善をお願いすることになりました。
実行するにあたっては、HPを運用しているグループ会社を含めて進める必要があり、ステークホルダーが非常に多い大規模プロジェクトとなるため、段階を分けて改修・リニューアルを進める必要もありました。
時間をかけながらも想定通りリニューアルを実現できた背景として、ネットイヤーグループ様がきっちりとHP運用を担っている部門の業務を理解していただいたうえで、裏付けされた実績を元に、細やか且つ粘り強くコミュニケーションを取っていただけたことが大きく寄与したと考えています。
効果検証ができる会社は世に多いですが、今回ネットイヤーグループ様が「業務理解=相手の動機や課題の理解をしたうえで納得感あるかたちでメリットを伝えていただいた」ことがプロジェクト遂行のカギだったと振り返っています。お持ちのケイパビリティはさることながら、実直に関係者に向き合っていただいたことに感謝しております。
今後も効果検証やプロジェクトリードをいただきながら、使いやすい、行きたい、過ごしたい商業施設を目指して、一緒に顧客体験向上に取り組めますと幸いです。
三井不動産株式会社
商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部
岡村 栄治様
プロジェクト情報
- クライアント
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三井不動産株式会社、三井不動産商業マネジメント株式会社
業種:不動産
三井不動産コーポレートサイト
三井不動産商業マネジメントコーポレートサイト
- プロジェクトメンバー
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鳴本資子(プロジェクトマネージャー)
重政美穂子(プロジェクトマネージャー)
園田静香(データアナリスト)
新木 信生(アカウントマネージャー)
新船 一歌(ディレクター)
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